Posted on 2008.04.29 - 授業レポート -
4月29日(火)。
好奇心を持ち、常に新鮮な目で植物を観察する。
これはフラワーデザインをする上でとても大切なこと。
「植物のキャラクターについても、授業で学んだ事がすべてとは思わず、自分の目と心で発見した新しいものを、自分の中に蓄えていく。そうすることで感性はさらに磨かれる」
まさにそうだ、先生の言うとおり。
一人ひとりの発見したことが作品の個性にもつながりそうだ。
そのための宿題が、先週出ました。
「3つの主張度の植物をそれぞれ4種類ずつ写真に撮り、名前を覚えてくること」
「主張度」は、植物のキャラクターを決める大切な要素の一つ。1本でも存在感があり支配的で高貴な印象の植物は、「大きな主張」、華麗な美しさを持ち、数本をまとめて使うことによって魅力がよりアップする「中程度の主張」、1本では強い存在感はないけれど、群生して用いることで個性が主張できるものを「わずかな主張」と呼ぶ。
この3つの主張度をしっかり頭に入れて、公園や植物園に足を運び、近所のお花屋さんにも頼んで撮らせてもらってきた。
今日の授業は、その写真を使っての実習。
まず、撮ってきた写真の中から最も存在感のあるお花を選んで、どんなキャラクターなのかを言葉で書き出す。
花や葉の形はどうか、プリントした写真や携帯、デジカメの画面に写っていない茎や植物全体の姿も思い出し、できるだけ細かく。植物の持つ雰囲気や空気感などの印象も!
私が選んだお花は、カラー。 感じることはいろいろある。 でも、他人が読んで理解できる文章で表現しなきゃいけないし、難しそう・・・。 と思ったけれど、お花をじーっと観察していたら言葉が浮かんできた!
「花は白くてラッパのような形をしていて、茎は長く真っ直ぐ。
葉の形は、お花屋さんで写した写真からはわからないけど・・・
茎の根元についていたんだと思う。茎は触ると柔らかい。
茎の緑と花の白の対比が爽やかで涼しげ。
気品はあるけれど、近寄りがたい雰囲気はなくて、人間に例えると、背が高くてスマートな、姐肌の頼れる先輩って感じがする」
次に、その写真の花と雰囲気の合いそうな植物を思い浮かべて
「空想の花束」を描く。
写生ではなくて、頭の中で作った花束を紙上にデッサンするってこと。
絵は好きだけど得意ってわけじゃないし・・・。
それに、ただ好きなお花を組み合わせればよいのではなく、お花の主張度とその扱いを考えないといけない。
隣の席のE子ちゃん、すごく可愛い花束を描いている。
携帯の画面上の画像は、前回の実習で使ったひまわり。
「去年の夏、ひまわりにブルーベリーの枝を合わせたアレンジメントを自己流で作ったらよく合ったから、思い出してそれを描いている。ひまわりは中程度の主張で、ブルーベリーは・・・わずかな主張かな?」
実際にお花を使って花束を作るときも、こうやって主張度を考えながらまとめるんだ、きっと。
今日はそのための予行練習だね。
私は・・・大きな主張のカラーに何を合わせよう?お花の種類にまだ詳しくないので、教科書の写真も参考にしながら考える。
「お花の主張度を頭に入れながらね、主張度ですよ」と繰り返される岡先生のやわらかな声をBGM代わりに、作業に熱中。
お花を丸く束ねることができたら素敵だなーと憧れていたので楽しみ!
これは花束の基礎中の基礎で、丸い花束の技術をマスターすると、フラワーデザインのバリエーションの幅が広がるんだって。
使うお花はスプレーカーネーション、姫アスター、ミリオグラタス、レザーファン。
大切なのは、下処理。
必要な長さを考えて茎を切り、余分な葉を除いて枝分けし、束ねるまで水につけておく。
「アスターは枝分かれが多いうえにボリュームがあり、水分がなかなか葉の先まで行き渡りません。また葉が多いから、行き渡ったお水もそこからどんどん蒸発していく。つまり、水を吸い上げるのに苦労するお花なのね。外に出しておくとすぐしおれてしまうので、下処理がすんだら手早く水につけてあげましょう。逆にカーネーションは丈夫なので、水なしでもしばらくは大丈夫。もちろん、どんなお花も水の中に入れることは大切なのだけど、どのお花がより先に水を必要とするか、植物をよく観察して見極め、水揚げや下処理の優先順位を自分で考えられるようになりましょう」
と岡先生。
フラワーアレンジメントで重要なのは、植物をしっかり観察する目。
それがあってこそ、技術も生きてくる。
「茎が真っ直ぐで、花が上を向いているものを花束の中心に入れるように。茎がカーブしたものは外側に」
でもスパイラルという、茎を1本1本、斜めに旋回させながらまとめていく技術は思ったよりずっと高度。
幅と高さのバランスが、思い通りにはならない!
「手に持ったときの安定感と、真上から見下ろしてみて、丸くバランスがとれているかどうかをよく考えてね」
と先生はおっしゃるけれど、
「均等に丸くならない」
「円の一部が膨らんで、なんだかヘルメットみたいな仕上がり」
「中心のお花が気に入らなくて挿し直したら、よけいバランスが崩れておかしくなっちゃった~」
と皆苦戦。
Y里ちゃんの作品はとてもきれいに仕上がっている。
高校時代は華道部で、フラワーアレンジメントの教室にも通っていたという本校でも数少ない花の経験者で、本当のお花好き。
「アレンジメントの教室では、ただきれいに生ければいいって感じの雰囲気を楽しむ内容で物足りなかった。この学校では基礎から理論も含めしっかり、きちんと学べるのが楽しい。さすがプロを育てる学校!!」
同じ花材を使っても、作品の出来上がりは全員微妙に違ってくるから不思議。
Posted on 2008.04.22 - 授業レポート -
4月22日。
「植物も、人間と同じようにキャラクター、個性を持っています。
自分のイメージするフラワーデザインを完成させるには、造形の秩序に従うだけではダメ。素材としての植物の力がなければ始まりません。
植物の個性を感じ取り、造形に活用する力をつけるため、今日からしばらく植物のキャラクターについて勉強しましょう」
と岡先生。
まず、先生が用意してくれたデルフィニウム、アゲラタム、ミニバラなどを手に観察。
前回同様、全体の姿、それから花、つぼみ、茎、葉の形、色、材質感など各部の様子を自分の目でよく見て、皆の前で印象を発表する。
実技でお花に触れる機会も多くなってきたせいか、前回より多くのことが発見できた。
例えば、バラ。
茎に花が一輪ついているだけなのに人を惹きつけるし、茎にトゲがあって強い植物という印象だけど、葉を一枚一枚触ってみると柔らかくて、どこかはかなげにも感じる。
これまで考えてもみなかった、新しいバラの個性だ。
また、同じ種類のものでも、花の咲き方や大きさ、枝ぶりや葉の様子によって受ける印象は異なることにも気がついた。
これらの印象は、観察する人の感性によっても変わってくるみたい。クラスメートの発表の内容を聞いていると、感じ方が様々で、へえっと思う。
植物のキャラクターを決める要素の一つに、「主張度」があることも、今日の講義で面白かったことの一つ。
これは植物全体の姿・形だけでなく、植物の社会の中での地位や存在感、また文化や内面的な受け止め方によって3つに分類される。
ユリやデルフィニウムなど、1本でも存在感があって、支配的で高貴な印象の花は、「大きな主張」。
ラナンキュラス、チューリップ、キクなど、1本でも華麗で豪華な美しさを持つけれど、数本をまとめて使うことによって魅力がよりアップするものを「中程度の主張」、アスター、アゲラタム、パンジーなど、強い存在感は持っていないけれど、群生して用いることで個性が主張できるものを、「わずかな主張」と呼ぶ。
主張度によって、必要とする空間も変わってくる。
こうした植物の特徴をよく知って、異なる主張度のものを一つの作品の中にバランスをよく配置すると、見る人に心地よいと感じてもらえる作品ができるという。
「人間社会の構造に置き換えて考えると面白いわよ。学校に例えれば、大きな主張は校長先生、中程度の主張はチームワークで働くその他の先生、わずかな主張は、1人では花の仕事はできないけれど、たくさん個性が集まると1つの主張を持つという学生である皆さん」
そんな先生のお話を聞いていると、言葉を持たないお花という植物のキャラクターに、ぐっと親近感を覚える。
これは華麗な中程度の主張の花2、3種類と、わずかな主張のものを組み合わせ、主のグループ、対抗するグループ、寄り添うグループと3つのグループに分けて配置し、平行性と装飾性の効果をバランスよく表現するもの。
今回はひまわり、バラ、アスターを使って作ります。
「同じ中程度の主張の植物でも、ひまわりとバラとを比べると主張の強弱は出てくる。同じひまわりでも、茎の様子、花びらのつき方、花の向きによってやはり主張度は変わってきます。そのへんのことも頭に入れながら花の様子をよく観察して、どの花をどのグループに入れるか決めましょう」
と斯波先生。
午前中の授業で習った主張度の話が、早速役に立つ!
ひまわりの個性は、背が高いこと。
それを生かしつつ、バラとの間にとる空間にも気をつけて挿さないといけない。
ひまわりを最も美しく見せる長さを自分で決め、茎にナイフを入れる。
やり直しがきかないから、練習といえども緊張する。
花が大きいから、位置が正しくないと頭が垂れてきて、茎が斜めになっちゃう。
何度もやり直すうちに、オアシスには無駄な穴がどんどん空いちゃうし・・・。
「バラを挿すまではうまくいったのに、アスターを入れたらごちゃっとなった。わずかな主張のアスターだから、群生したイメージで、と思ったけど、その程度がまだよくわからない・・・」
「ひまわりがまっすぐ挿せなくて、平行感が出ないよ~」
「花が一つ一つボーンと大きい花材は初めてだから、やりにくいよね」
とクラスメートとも言い合いながら、それでも楽しく完成させました。皆の作品がいっせいに机に並んだ教室は、まるでひまわり畑みたい!
Posted on 2008.04.15 - 授業レポート -
4月15日。講義もいいけれど、やっぱりお花に触れる実技は楽しい!
午前中、構成理論の授業で習った大事なこと。
それは、フラワーデザインのイメージを決めるには「造形の秩序」と呼ばれる概念に従うことが不可欠で、中でも特に重要な「コンポジション」「レイアウト」「モーメント」という、3つの要素についてのお話。詳しく説明すると・・・
コンポジションは、作品の構成のことで、対称(シンメトリー)に作るか、非対称(アシンメトリー)にするかで決まる。
レイアウトは配置、花の挿し方のこと。平行、交差、スパイラル、アンフォルメル(不定形)の5つのタイプに分かれる。
モーメントは花材や植物本来が持っている動きの方向である力線、導線のことで、その植物の伸びる方向や、見えない力、つまり、植物の持つ生命力を表現するもの。
花の茎が器のどこから出ているかを基準とし、すべての植物素材の茎が一点に集中するものを一焦点または一生長点、茎が独自の基点をもっている造形の場合は複数点、複数生長点、また植物素材を土台に配置しない造形、ガーランド、リース、コラージュなどのオブジェ的作品の場合は、無焦点になる。
自分の作りたいデザインイメージをしっかり固め、自然的な作品か、人工的かを決めたら、この造形の秩序に添ってまとめることが表現を成功させる一つのポイントになる。
また作り上げた作品が最初に思い描いたイメージと違ってしまっても、造形の秩序に従ってチェックすれば、問題が見えてきて解決する、とか。
確かに、思いつきだけで作品を作ると失敗するもんね。
失敗の原因がわからないと先に進むのが嫌になっちゃうし、上達しない。
理論をきちんと知っていると、そういうことはなくなるんだ。
今制作中の作品は、コンポジションはアシンメトリー、レイアウトは平行、モーメントは複数生長点で、植物の生長している姿を再現し、自然的なイメージに仕上げる予定。「平行植生的」という構成です。
「植物の様子をよく見て、配置場所を決めましょう。花の咲き方、茎の具合。このあたりの葉っぱは除いてしまったほうが茎がよく見えて、平行に並んでいる感じが強調されるわね」
まだ枝をナイフで切るのもちょっとおっかないし、お花を挿すのも迷ってばかり。
でも岡先生の説明はとてもわかりやすくて、なんとか完成させることができました!
写真右が私の作品。
先生からの講評は、「ラナンキュラスが真ん中にドンと咲いて目立ちすぎる。
私が中心、っていう感じで主張しすぎているわね。
アシンメトリーをはっきりさせるには、中心にお花を入れないことが大切」とのこと。
忘れないように、ちゃんとノートにメモしておかなきゃ。
Posted on 2008.04.08 - 授業レポート -
2008年4月8日(火)。
今日は先生がたくさんのお花を用意してきてくれた。カーネーション、マーガレット、ナデシコ、マトリカリア、ガーベラ、フリージア、タニワタリ・・・。一度に全部の名前が覚えきれない!
「花、茎、葉の形、全体の様子や状態をよく観察して、それぞれのお花の特徴や印象を皆さんに発表してもらいます」
と岡先生。与えられた観察の時間は15分。クラス全員が花を1本ずつ手に取って、じーっといろんな角度から眺め、考えて、ノートに思ったことを書きつける。そのあと、先生から質問が!
先生「スプレーカーネーションはどんなお花ですか?」
学生1「花の形は扇形でピンク色で、たくさん枝分かれしていて・・・」
先生「マーガレットの印象は?」
学生2「可愛くて、はかなくて、でも触れると茎が硬いから・・・しっかりしている印象」
先生「どんなところに生えていると思う?」
学生2「・・・水分の多いところかな?」
今までなんとなく花ってきれいでいいなと見ているだけだったけれど、デザイナーになるためには、一つ一つの花の特徴や美しさをさまざまな角度から感じないといけないんだ。
でもすごい。みんなちゃんと説明できている。言葉で表現するのって難しいのに。幸い私は指名されなくてホッ。花そのものだけでなく、その花が生えている自然環境や風景、周りにはどんな植物が生育しているか、についても想像を広げる。想像するだけでなく、実際にその場所に足を運び、注意深く観察することも大切。そこから、アレンジメントのヒントはたくさん得られるのだそうだ。
それから今日習ったのは、フラワーアレンジメントには「自然的」な作品と、「非自然的=人工的」な作品がある、ということ。
「自然的」とは、自然をお手本にし、植物が実際に生えている様子をイメージして作るもの。植物の生長する姿や、生育環境を考えて花材を扱うことが必要。
作品に規則性はなく、植物の自由な姿を表現するため、構成(コンポジション)は、左右対称にならないよう、空間の変化をつけながら非対称(アシンメトリー)に仕上げる。
一方、「非自然的=人工的」とは、自然の姿や法則に縛られずに、作者の制作に対する意図が前面に出た作品のこと。花材は作者が設定した作品イメージに合わせて扱い、コンポジションは意図的に対称形(シンメトリー)に作ってもいいし、アシンメトリーでも可能。
うーん、なんだか、まだピンとこない・・・。次の授業でもっと詳しく学ぶみたい。だから、とりあえずはいいか。でも、
「アレンジメントを一目見て、自然的か人工的か、シンメトリーな印象かそうでないないかを感じとるのは、とても大切なことなのよ」
という岡先生の言葉が強く心に残った。
これまでは、可愛い、きれい、なんていう単純な感想しか持ってなかったし、自然的な装飾と、そうでないものがあることも知らなかった。今度お花屋さんに寄ったときは、よく観察してみなくちゃ。
Posted on 2008.04.03 - 授業レポート -
2008年4月3日(木)。
午前中の入学式のあと、午後に早速授業!それも「構成理論」。なんだか難しそう。昨日は入学への不安と期待でなかなか寝つけず、睡眠不足なのに・・・。
講師の岡先生からの第一声。
「お花は思いつきでデザインし、生けることはできません。センスのある人だったら、それなりにまとめることはできるかもしれない。でも、本当に人に心地よいと感じてもらえる作品を作るためには、感性だけでは不充分なのです」
えっ、好きなお花を、きれいに、好きなように合わせるだけじゃダメなの?
「構成理論は、一つ一つのお花の特徴をよく知って、何をどのようにすれば、より美しいデザインができるのか、を理論的に学ぶ授業です。つまり基礎なのね。基礎理論を知れば、誰にでも美しい作品が作れるようになるのよ」
そうか。お花は大好きだけど、センスにものすごく自信があるわけじゃないから、ちょっと励まされる。そのときの気分や体調でフラワーアレンジメントの仕上がりが左右されるようだったら、買いに来てくれるお客様に失礼だもんね。
常に一定のレベルを保つプロとしての作品を作るためにも、理論はきっと必要。
今日はフラワーデザインの簡単な歴史についての勉強と、これからこの学校で何を学ぶのか、の話。
「フラワーデザイン」「フラワーデザイナー」って、日本で生まれた和製英語なんだって。欧米では「フラワーアーチスト」とか「フローリスト」と呼ばれているらしい。造形要素や造形秩序など、耳慣れない言葉もでてきたけれど、不思議と眠くはならなかった。